なぜ戦争はなくならないのか
高校2年の文学国語が米原万里著『バグダットの靴磨き』に入っている。
少年が家族を全てアメリカの爆撃によって失い、靴磨きで貯めたお金で銃を手に入れアメリカ兵を殺す計画をてていると言うストーリーなのだけれど、なんともいたたまれない作品だ。
憎しみの連鎖が世代を超えて受け継がれて行く世界。そこには夢や希望がただただ蹂躙され、憎悪が生きる目的になってしまっている。
生徒たちにこの物語の感想を書いてもらった。兵役の義務がない国日本。戦争が80年あまりない国日本。やはり高校生たちの戦争に対するスタンスは、非常にオブジェクティブでスマートだ。
宗教的軋轢や民族主義、そして侵略者の大義名分を書いた生徒たちが多い中でひとりの男子生徒がこんなことを書いていた。
戦争は悪いと言うけれど、どんな戦争も自分たちは正義だと思ってやっているのではないだろうか、と。だから戦争はなくならないと締め括っていた。
自分たちの侵略も無差別攻撃も正義のためにやっているのだとしたら、生徒が言うように確かに戦争はなくならない。
やなせたかしは、アンパンの主題として、本当の正義とは「お腹がすいた人を救うこと」と語っている。
正義のために食糧が枯渇するならば、戦争の正義とは一体なんだろうかと、僕はやなせたかしの言葉を思い出していた。
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