天童荒太~魂の再生~
母が入院している県立病院は完全看護なので、僕が直接手を貸すことはないのだけれど、昼間は家族が全員職場に行っているものだから、必然的に夕方から仕事が始まる僕が、着替えを届けたり、病院から指示される事務的なことをやっている。事務的なことと言ってもたいしたことではなく、部屋を変えるので署名してくださいとか、主治医の先生から病状の経過説明をうけたりとかそんな感じのことである。
だまって寝ていると、意識がぼ~として、痴呆が進行されるのが心配なので、起きている時はちょくちょく声をかけて、親子の当たり障りのない会話をやっている(笑)。
母が眠りにつくと僕は、入院病棟のラウンジに行って読書タイムとなる。11月に入ってからの僕の読書タイムは、天童荒太の小説がメインになっている。『家族狩り』 『悼む人』 『永遠の仔』を読了した。いづれもかなりのページ数がある大作で、ドシンと重い作品だった。
天童荒太は1960年の5月生まれなので、僕と同学年の作家である。家族崩壊や児童虐待をテーマとした作品が多く、心が痛くなるなるようなシーンが連続する。
きっと天童荒太と言う人間の感性は、痛ましい家庭の崩壊をあえてさらけ出すことで、隠蔽しがちな負の感情と向き合う起爆剤を、読み手に与えようとしているのだろうと思う。
同世代ゆえに、天童氏の社会に対する深い悲しみを感じることが出来る。しかしその悲しみは決して希望のない悲しみではなく、魂の再生を希求する光でもある。
彼の作品の中では、実に多くの登場人物が死を迎える。生きて行くもろさを提示する彼の作品ではあるが、だからこそ生きる糧になる行間の言葉が、あふれ出てくる気がする。
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