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2015年3月22日 (日)

荻原浩の世界

最近僕が読んだ本のリストである。

  • 1997年 - 『オロロ畑でつかまえて』で第10回小説すばる新人賞受賞。
  • 2003年- 『コールドゲーム』で第16回山本周五郎賞候補。
  • 2005年
    • 『明日の記憶』で第2回本屋大賞第2位、第18回山本周五郎賞受賞。
    • 「お母様のロシアのスープ」で第58回日本推理作家協会賞(短編部門)候補[6]
  • 2006年- 『あの日にドライブ』で第134回直木三十五賞候補。
  • 2007年 - 『四度目の氷河期』で第136回直木三十五賞候補。
  • 2008年 - 『愛しの座敷わらし』で第139回直木三十五賞候補。 
  • 2011年- 『砂の王国』で第144回直木三十五賞候補。
  • 2014年- 『二千七百の夏と冬』で第5回山田風太郎賞受賞。

先月の末から今月にかけての僕の読書の旅は、荻原浩の作品だった。僕より4歳ほど年上の荻原氏の作品ではあるが、社会通念の基盤が同じと言ったらいいのか、常識の虚構を探る感覚が同じというのか、戦後の高度経済成長のど真ん中で育ってきた世代が持つ哀愁が漂う作品群だ。強烈なシンパシーを覚える。

若年性アルツハイマー病をテーマにした『明日の記憶』が彼の作品の中では一番認知度が高い作品だと思うが、僕の一押しは『砂の大国』だ。

40代の一流の証券会社に勤めていたサラリーマンが、会社を辞め、家族に去られホームレスになって行く話なのだが、そこから主人公がのし上がって行く復讐劇は圧巻だ。どんでん返しのこの物語は、日ごろ会社や家庭に何らかのストレスを感じているサラリーマンパパたちにとって、痛快現代劇であるとともに、一種の恐怖でもある。

自分が勤めている会社の存続や、営む仕事に不安のある方は逆に読まないほうがいいかも知れない。幸福の端っこに横たわっている深淵を、のぞきたくない人は多いだろうと思う。

久しぶりに睡眠や食事を忘れて読み耽った小説だった。荻原浩の小説は、多くの毒気を含有しているが、その毒気が現代に生きる人間の本性を引き出して行く。荻原浩はたぐいまれなストーリーテラーである。

どの作品も軸がぶれることなく、安定した彼のまなざしを感じる。視野の広さが抜群の作家だ。ぜひ荻原文学の世界に触れてみて頂きたい。

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