孤独癖
孤独が忍び寄ってくる年齢になった。僕はどちらかというとそのことを肯定的に捉えている。生きることに急ぐ必要はないけれど、やり過ごしてきた多くの残骸を俯瞰する時、ふとため息をつくとともに、懐かしさに心の隙間が充足する瞬間がある。
街に繰り出して酒を飲むなんてことは、年に数回もない。昔から人付き合いの悪い僕は、知らぬ間に本を片手にジャズを聴いている。孤独癖というと体よく聞こえるかもしれないが、単なる変人かも知れない。
老いた僕の母は、時々猫と会話をしている。50を過ぎた僕も、そんな母の気持ちがなんとなく分かるような気がするこの頃だ。最近街で猫を見かけると近づいて話しかけてみる。かつては逃げてしまった猫達が、近頃は逃げないで僕に擦り寄ってくる。猫たちにも何か通じるものがあるのだろうか。
塾にやって来る小学生に、おばあさんやおじいさんの年齢を聞くと、僕と変わらない年齢だったりする。いつの間にかそんな年になっていた自分に驚くとともに、なぜか不思議な安堵感を覚えるこの頃だ。
今年も9月になった。市内の高校は昨日、今日と文化祭のところが多い。秋になると聴きたくなるのがアート・ペッパーのサックスだ。
ペッパーのサックスを聴いていると、様々な人生の色がにじみ出てくる。録音した時代時代で、これほど音の陰陽が変遷するジャズプレーやも珍しい。しかしそれでも、ジャズ喫茶やラジオから流れてくるペッパーのサックスは、一発でわかるから不思議だ。
昨夜の大雨と打って変わって今日の空は綺麗な秋空だ。どうぞペッパーのサックスを堪能してください。
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