難問だったセンター国語
先月実施された大学入試センター試験で、国語の平均点が過去最低になったことが分かった。これまでの最低点は03年の101.08点(200点満点)だったが、今回は101.04点。昨年の平均点は117.95点で約17点も下がったことになる。近年で異例の低さになった理由を、予備校関係者は、例年出題される「評論」とは異なり、批評家・小林秀雄の随筆的な文章が出題されたことを挙げている。
【難問だったセンター国語 小林秀雄の文章とは…】
国語は例年、評論、小説、古文、漢文の順で1問ずつという問題構成。その第1問に小林秀雄の「鐔(つば)」が出題された。刀剣のつばを題材にした文章で、文の趣旨や筆者の考えを答えさせる問題だった。
代々木ゼミナールの土生(はぶ)昌彦.教材研究センター本部長によると、論理構成が明快な「評論」というよりは、私的な想像も含めた随筆的な文章で、読みづらく感じた受験生が多かったという。文章の末尾に付ける注釈も、例年は5個以内だが今回は21個も。本文の分量も前年比で約600字増えた。
小林秀雄は昭和を代表する批評家。難解な文章で知られ「批評の神様」とされる。30年ほど前には大学入試でよく出題されたが近年は少なく、センター試験で出題されるのは初めてだ。
昨年と比べて17点も平均点が下がり、土生さんは「受験生からは『少しパニックになった』『想定と違う文章で驚いた』などの声が聞かれた。極端に難しくなったわけではないが、過去問とまったく違う文章だったのが影響した」と分析する。ベネッセ岡山本社高校事業部の松永和喜(かずき)さんも「論理性より感覚的に理解することが求められた。受験生はさまざまな文章を読み慣れておく必要がある」と説明。大学入試センターは、例年6月に発表する報告書で分析結果を示すという。(苅田伸宏) 毎日新聞
今回の国語の問題は、多くの受験生が、意表を突かれた内容だったろうと思う。友人の学び舎の小林先生も、今回のセンター国語の問題に対しては、入試直後に鋭利な意見をブログにて公開している。
世の受験生は、英語や数学には並々ならぬエネルギーを傾けるが、現国となると、読書量が勝負だとか、感性の問題云々などと、どこぞの受験評論家のような御託を並べて、手を抜く傾向がある。
実は世の中には難解な文章と言うのは存在しない。作家自身の文章の癖を捉えられない状況が難解さを生み出す。過去問だけをひたすら解いて、現代文を攻略したような気分になる受験生が多いようだが、古典的な作品へのチャレンジをぜひ試みてもらいたいと思う。
国語力は人間力の鍛錬になる。就職難の時代、理系人間が重宝がられる傾向が強いが、僕は文系人間の衰退が、文明の衰退につながると心配している人間だ。
受験はテクニックだと豪語する予備校教師が多いが、こと現国に関しては、言葉に対する謙虚さ、言葉への尊厳を抜きにして、真の思想の伝播はない。
受験生諸君、現代文を侮ることなかれ。古典的評論文の中には、時代を生きて行くための多くの叡智が埋もれている。心して欲しい。
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私の記事をご紹介いただき、恐縮です。
それにしても、今年のセンター試験の国語平均点の低さには驚きました。ある程度下がるだろうとは思っていましたが、100点チョボチョボとは思ってもみませんでした。
問題を解いたときには少し難しいなと感じました。ただ、難問かと言えばそうでもなく、小林秀雄を題材にした割には解きやすい方ではないかと思います。昔苦しんだ問題の難解さにくらべれば、今回のセンターの問題などはまだかわいいほうではないでしょうか。
正直なところ、ノスタルジイを覚えるような出題はよしてほしいなあ、というのが実感です。
(かねごん)
小林先生のおっしゃる通り、出題に使った文は、受験生には気の毒でしたね。
高校生に読んで欲しい文と、受験に適した文のギャップが生じてしまった今回の国語だった気がします。
国語の現文が軽んじられてきたことに対する、出題者の怨念(笑い)みたいなものを僕は感じましたね。
投稿: 学び舎主人 | 2013年2月 8日 (金) 14時12分