遠野物語
早池峰神社のことを調べようと、久しぶりに遠野物語を手にとってみた。
軽く流すつもりが、引きこまれてしまった。若い頃読んだ遠野物語と、様々な民族学や神話学を読んできた今の自分が感じる面白さは、天と地ほど違った。遠野物語はとんでもない書物だ。
山神や奇っ怪な現象の裏に読み取れる、農民の暮らしの激情ともとれる信仰や諦観の姿にしばし僕は息を飲む。
すべての神話や伝説には間違いなく、そこに暮らす人々の歴史がある。そしてその歴史は決して過去の遺物ではない。遠野物語は現代に暮らす我々の深層に、忘却していた人間の情念を呼び覚ます。
過酷な労働の中で一生を終えていく農民の唯一の楽しみは、祭りの宴であったり、一夜の逢瀬であったりする。山の幸と、そして荒ぶる神に左右される農耕の収穫。彼らの命は神頼みであり、時に異界の住民への憧憬を生み出す。
閉鎖的な山村で、いく世代にわたって繰り広げられる婚姻。遺伝子的な劣勢が、やがて神の子と称する誕生を生み出す。河童伝説や、馬神や蛇神の子を孕んだなんどの話が語られていく。
遠野郷に限ったことではなく、岩手の街道を走ると、至る所に石塔が立っている。その1つ1つに、悲しみや畏敬の伝説が語り継がれてきた。
僕の異界探索はまだまだ続きそうだ。
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