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2010年6月12日 (土)

僕が今の仕事を引退する時

音楽が好きで、若い頃は寝食も勉強も忘れて音楽をシャワーのように浴びていた。楽曲の素晴らしさは人それぞれに感じるものがあるだろうけれど、歌は詩が一番の命じゃないかと思っている。

リズム&ブルースやロカビリーを経てビートルズが誕生して以来、音楽はテクノポップやヘビーメタル、フィージョンそしてブラックミュージックのヒップホップ等、コードラインやリズムセクションは全て出尽くした感がある。それぞれの音楽の融合が新たな形を生み出して行くだろうけれど、斬新な音楽革命は当分はないだろうと思う。

しかし詩の世界は違う。その人間の生きてきた背景をバックに、言葉は新しい世界をどんどん構築して行く。僕らの世代の作り手に秋元康という人間がいる。20代に入っておにゃん子クラブの♪セーラ服を脱がさないで~などという歌詞をしたためたかと思うと、美空ひばりの♪川に流れのように~を発表する天才詩人である。現在は50を過ぎてAKBの楽曲を全て手がけている。

まさに彼の詩の世界は留まるところを知らない。若者の感性や人生を諦観する熟年の心までも、彼の詩は高速回転の輪転機のごとく言葉を放射して行く。

秋元だけではなく、歌謡界には素晴らしい詩人がたくさんいる。

若者のロックを聴くことが時々あるのだが、残念ながら詩が伝わってこない。いくら演奏がうまくともルックスが良くとも、詩が溢れてこなければ長続きはしない。

ここ20年、独立をして塾を立ち上げて以来、貧乏暇なしを絵に書いたような生活なものだから、コンサートに出かけることがほとんどなくなったが、こんな詩が書けたらいいな~と思う若手のアーチストは何人かいて、ユーチューブなどで聴いている。

個人的な嗜好で言わせてもらうと、スピッツやゆず、アンジェラ・アキの詩は僕は大好きだ。メロディーが無くとも、詩自体が琴線に響いてくる。

10代から20代の頃の僕は、共感する詩に思わず耳を傾けたが、現在は気づきを与えてくれる詩にドキッとする。秋元康を超えるような詩人たちがどれほど今後輩出してくるのか分からないが、きっと新しい時代の感性を身にまとい、老人になって行く僕がキャッチ出来ない世界を創造して行くのだろうと思う。

若者に支持される楽曲の歌詞に、感動を覚えなくなった時が、僕が今の仕事を引退する時期だと考えている。

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