秋を深呼吸
秋の風景が僕の家の周りに漂い始めた。コスモスが風に揺れ、赤とんぼが秋空にすいすいと舞っている。1年で僕が一番好きな季節だ。
空をじっと見上げていると、秋の空は、夏の輝きにとまどった子どもたちがふっと息を吐いたペパーミントのような雲がふわりと浮かんでいる。
庭先に立ち、伸びほうだいになった雑草の中に、小さな秋の花を見つけた僕は、その可憐さにどきりとし、秋の風と共に横を走り去って行く飼い猫の爽快さに、夏の過ぎ去った時間を僕は一人追憶する。
夏の日差しで成長した秋の主役たちが凛とする中、秋の空をキャンパスにして草花たちは、思い思いの装いをし、美しさと愛らしさを誇っている。
それにしても夏の花は夏らしく、秋の花は秋らしい。萩の繊細さやヒヨドリバナのつつましさは、秋の空気に溶け込んでこの季節を彩っていく。
山の小道をかさこそと歩いていると、きのこが顔をのぞかせていた。森のあちこちで鳴く鳥の声も、初夏の恋の季節から一転して、優しいトーンが響いてくる。
8月のカレンダーが剥ぎ取られた日から、蝉がなきやんだ。人間が季節を決めるのではなく、自然が季節を創造していくことを改めて感じるこの頃である。
暑かった夏が過ぎ、放課後の教室から合唱の歌声が聞こえてくると、いよいよ文化祭も近づいてくる。
昨年は「手紙」に涙した僕だったが、今年はどんな素敵な歌を子どもたちは届けてくれるだろうか。教室に吹く風がひんやりとしてきた。秋を深呼吸しよう・・・・。
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