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2009年8月 1日 (土)

松岡さんの功績

下の子がようやく小学校に入学した頃、家族でハリーポッターの映画を見に行った。あれからもう8年も過ぎた。息子たちは第一作目からハリーポッターを読んできた。時に図書館から借りて、時に古本屋から買って、また時に新刊本で。

僕もハリーポッターは全作読んできた。訳本で、時に原作で。おそらく単独の作品としては、21世紀に入って世界で一番読まれた物語だろうと思う。

両親を亡くした子どもが、親戚の家に引き取られ、さまざまな葛藤の中、自分のルーツを探り成長していくストーリーはまったくもってありふれた古典的ストーリーではあるが、ホグワーツという魔法学校、そして闇の帝王ヴォルデモートというキャラクターをバックに展開されるプロットのすばらしさ、そして作者のアイディアの引き出しの多さは実に圧巻である。

僕はこのまれに見るヒット作品の現象はなぜ起きたのかと言えば、翻訳家の手腕によるところが非常に大きいと思っている。つまり訳がすばらしいのである。

リズミカルで、ポップで、そして威厳があり、行間にそこはかとない哀愁が漂っている。各国の翻訳者の技量のすばらしさが、ハリーポッターが世界で愛された一番の理由ではないだろうか。

世界の言語が情報というネットワークで繋がった証であると思う。物語の中に出てくる事象を、共通認識できる言語と知識と感性が、世界の人々が共有できる社会になったことが、今日のハリーポッター現象を生んだ要因だと思っている。

日本語版の翻訳をされた松岡祐子さんの努力には脱帽する。手元にハリーポッター4thの原文があるが、Society  for the Promotion  of Elfish Welfare を『屋敷しもべ妖精地位向上協会』と訳した松岡さんの翻訳センスには惚れ惚れするかねごんである。

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