僕の好きな山
国道四号線を一関市から平泉方面に北上していくと、山ノ目を過ぎ、すぐに右手に蘭梅山を見ながら峠道にさしかかる。田んぼの緑の絨毯の向こうに束稲山(たばしねやま)が見えてくる。僕はそこから見える束稲山が一番好きだ。
平泉中尊寺がある関山から眺める束稲山は、確かに優雅な曲線を描き訪れるものの目を癒してくれるが、一関から眺める束稲山の稜線は、男性的ないかめしさを醸し出し荒々しい。
藤原三代が崇拝した山だけに、山路の至る所に石宮や塚が祭られている。
息子たちが小さかった頃、この束稲山に家族で登山をしたことがある。登山といっても標高600メートルにも満たない山なので、登山道から経塚山山頂まで30分ほどの道程だが、子ども連れの山登りにはちょうど良い。日本カモシカが生息しており、幸運な方は遭遇するかも知れない。
山頂からは羽奥山脈に連なる、焼け石岳、栗駒山の勇壮が眺望できる。また北に目を転じると岩手山の頂も視野に飛び込んでくる。晴れた日は絶景が楽しめるスポットである。もちろん山頂までは車でも行ける。一関駅から束稲山山頂までは30分ぐらいだろうか。平泉の町が一望できる場所でもある。
登山道の途中にある巨大岩の体内くぐりである。奥州藤原氏の奥方が、安産祈願にくぐったという伝説が残されている岩である。
僕も五回ほどくぐったが、パワーを感じる岩だった。興味がある方はぜひチャレンジして頂きたい。
ききもせず たばしねやまの さくらばな よしののほかに かかるべしとは
西行法師が束稲山を読んだ歌である。
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