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2009年6月 5日 (金)

DNAの螺旋階段を上るように

太宰治よりも三島由紀夫よりもそして夏目漱石よりも、私は年上になってしまった。

高校時代、40代半ばで他界した小説家たちが、とても老獪で大人に感じられた。今もその感覚はあまり変わらない。文章の中で使われる言葉の重みと大胆さが、老人のような枯れた感性のときもあれば、15歳の少年のような初々しさの躍動感を持つときもある。

無機質とも言える感情が、押し殺されるような悲しみや怒りを言葉に押し込め、まるで幼児がダダをこねているように、ストレートに心に突き刺さってくる。私にとってそれが文学だった。

好きな作家をあげればきりがないのだけれど、高校時代に一番読んだのはヘルマンヘッセだったように思う。日本の作家では夏目漱石の小説はほぼ高校時代に読破しただろうか。

私は子ども時代、他人の感情を共有することが苦手だった。兄弟がおらず、いつも一人で居ることが多かったことが起因していたかも知れない。本を読むことはまるで新しい友達を探すような感覚だった。

大人になって教育書や心理学の本を読むようになった時に、それまで読んできた小説や物語の舞台裏というのか、なぜ人間が文学に惹かれるのか、なぜ物語を書きたくなるのか、その衝動の脈絡がぼんやり分かったような気がした。

まるでDNAの螺旋階段を上るように、人間は進化を遂げてきた。価値が多様化する社会の中にあって、個性的であること、自分らしくあるとはどういうことかを我々人間は模索する。しかし日々自分に訪れる感情や、思い込みが何なのか、どこから来るのか、不安なものである。

小説や多くの文学を通じて、人を憎む感情や、愛する切なさや、個人の脆さや逞しさなど、一見特別な感情や感性が、万人に共通なものであることを理解する。自分の感性が多くの人達と共有していることを知る。

朝日が湖面に輝き、新緑の光が、季節の風が、多くの人達を癒していく。その反射する光が、立つ場所によって瞬間瞬間の時間によって変わる。同じように言葉も、年齢や状況や受けての感性で変わっていく。書き手の意図や啓蒙を超えて、文学がまるで湖面に反射し放射し拡散していく光のように、人々の心の中にしみこんで行く。

若い頃の読書は、長い人生を生きていくうえの忍耐を作ってくれるものだと私は考えている。毎日体を鍛えることと同様に、心を精神を育んでくれるものだ。今若者の本離れが危惧されている。困難な時代だからこそ多くの本を読んでもらいたい。

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コメント

素晴らしい文章と内容です。読書量と思索時間と体験が生みだしたものと感じました。かねごんさんのこのような文章を読むと、疲れもとれますね。私は今、YOSHIKI/佳樹を読んでいます。軽くおすすめです。


(かねごん)
せなじいやさんコメントを頂きありがとうございます。
大変なお褒めの言葉をいただき恐縮です。
YOSHIKI/佳樹私も読んでみたいと思います。
今夜は久しぶりのどしゃ降りです。畑の野菜たちもほっと一息でしょうか。

干天の慈雨のような文章に、あれこれ思いを巡らせながらじっくり読ませていただきました。
小説や文学を通じて自分の感性が多くの人たちと共有していることを知る、ということに自分もどれだけ励まされてきたことだろかとしみじみしてしまいました。

小説を読むということで思い出しました。以前の記事にあった息子さんの村上春樹論もぜひ紹介いただけないでしょうか。ブログでの公開を望まれないのであれば、メールででも送っていただけないかと思っております。今の中学生が村上春樹をどのように読んでいるのかとても関心があります。
うちの愚息は村上春樹にはまったく興味を示しませんので、あてにならないものですから…、トホホです。


(かねごん)
小林先生今晩は。
干天の慈雨のような文章、などと形容していただき、照れてしまいます。
先生のような文学的感性の研ぎ澄まされた人に褒めていただくと、子どものようにうれしいものです。
息子の春樹論は伝聞でいつか公表したいと思います。

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