叶わなかった夢
家が決して裕福じゃなかったので、子どもの頃から親に何かをねだるということがなかった。中学校から高校にかけては、楽器やレコード等欲しいものがあればバイトなどをして買ったゆえ、親にお金をせがむこともなかった。
しかし、さすがにどうしようもなく欲しいというものが出てくるのが子ども心で、今までに親にねだったものが三つある。
一つはラジカセだった。小6も終わり、中学校に入る前の春休み、無理やり親を市内の電気屋さんに連れて行き買ってもらった。口実は、中学から始まる英語のためにカセットテープ付のラジオが欲しいというものだったが、もちろん目的はFMから流れてくるお気に入りの曲をエアーチャックし録音することだった。
あのラジカセは本当にボロボロになるまで使った。一番最初に録音した曲は今でも覚えている。カーペンターズのイエスタデーワンスモワーだった。今でもメロディーを耳にすると、ほろ苦いあの頃の風景がよみがえる。
二つ目は小学校一年の時に買ってもらった自転車だった。父が春の種まきのために出稼ぎから戻ってきた時にせがんで買ってもらった。大きくなっても乗れるようにと、買ってもらったのが大人ようだったので、サドルをはずし俗に言う三角乗りをして一生懸命ペダルをこいでいた記憶がある。これも小学校六年生までお世話になった。
中学校は6キロも離れたところだったので、さすがに帰りの山道がきついと思ったのか、ねだる前に父親が変則ギアー付のサイクリング車を買ってきてくれた。本当にありがたかった。
そして問題の三つ目のものだが、実はこれは叶わなかった。何度頼んでも買ってもらえなかった。東京オリンピックが終わった後だったと思うが、レーシングカーのミニカーが欲しくて何度も頼んだのだが残念ながら買ってもらえなかった。
この年になっても、缶コーヒーのおまけにレーシングカーが付いていたりすると、思わず大人買いをしてしまうのは、きっと幼少の頃に満たされなかったトラウマだと思っている。
塾の教室に、ポルシェのミニカーなどを並べて飾って置くと、我社長に「こんなもの勉強に関係ないでしょ!」と言われ撤去されるのであるが、私の叶わなかった夢の残像ゆえ、どうか許して頂きたいと思う少年かねごんであった。
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