東京タワーの思い出
東京オリンピックが終わった翌年だったろうか、東京に出稼ぎ行っていた父が、正月に帰ると書きつづった絵葉書を家族によこした。
その絵葉書は東京タワーの絵葉書だった。日本経済躍進の象徴であり、東京のシンボルだった東京タワーに、まだ30前だった私の父はきっと明るい未来を夢見、家族のために頑張っていたのだと思う。
まだ小さかった私は時々その東京タワーの写真を見ては、父が働いている東京という街を子どもなりに想像していた気がする。
私が初めて東京タワーを見たのは、東京の私大に入った18歳の時だった。山手線の電車の中から不意に視界に入ってきた東京タワーは、小さい頃見た写真の東京タワーよりも、なんだか小さく見えた。きっと周りの高層ビルの高さが、そんな感覚を私に与えたのだろう。
それから20年の歳月が過ぎた夏の日、私は小学4年生になる長男と、幼稚園に入った次男を連れて、東京タワーの展望台に上がるエレベーターの列に並んでいた。
家内の父が、孫である私の息子たちに、「外階段なら待つこともなくすぐ登れれるよ」と声をかけた。息子達は大冒険が出来るとあって大喜びである。
高所恐怖症の私は10分もしないうちに、自分の選択した行動に後悔をし、脂汗をかきながら、すくむ足を鼓舞し、やっとのおもいで息子達の後を追った。
息子達はすでにあの時の出来事が記憶から遠のいているようだが、私はあの恐怖は一生忘れない。
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