さざなみが聞こえる
田んぼの稲がこうべをたれる季節になると、東北の秋はいっきに駈け足でやってくる。
一週間前までの暑さがまるで嘘のように、朝晩は涼しくなり、蟋蟀(こおろぎ)のざわめきが夜の中に押し寄せてくる。
もうすぐ畑のカボチャの収穫である。ハロウインように植えた巨大カボチャがゴロンゴロンと出来上がった。
夏休みにあんなに飛び交っていたツバメ達の姿もめっきり減った。山里にはこれから多くの木の実や果実が色づいて、冬を前にした小鳥や動物達に秋の恵みを提供する。
我が家の裏山に生息する、野うさぎや狸やキツネ、そして多くの小動物の活動が活発になる季節だ。山ぶどう、アケビ、トチノ実やどんぐりなど、山里は小鳥達や動物達の自然の食料庫となる。
あんなに鳴いていたカエルも、夜のしじまに切り込んでくるヨダカの鳴き声も、夏の終わりが来ると急に静寂の中に隠れてしまう。
秋の虫たちの息遣いだけが聞こえてくる夜更け、私は一杯のコーヒーを飲みながら、今日あった多くのことを振り返り、そして明日訪れるであろう希望の一日を思う。
季節がめぐり来るたびに年を重ねる一瞬を、私はまるでスローモーションを眺めているかのように、そっとやり過ごす。
秋の日のさざなみが聞こえてくる。時計のカチカチという音だけが響いてくる部屋の中で、私は秋に溶け込んで行くようだ。
9月の空が近づいて、私の周りも秋色になる・・・・・・・
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