SMILE
ジャズの歌い手で私が一番好きなのは、ジュディー・ガーランドだ。哀愁をおびた若き日のジュディーは、ローマの休日のオードリ・ヘップバンに勝るとも劣らない魅力がある。
けだるい少し鼻にかかったチャーミングな歌声は、小さい頃聞いた遠い国のおとぎ話のような安らぎと、心地よさを与えてくれる。オズの魔法使いの歌声はまさに適役である。
ぽかぽかと暖かい春の日の午後、ジュディーの歌を聞いてしまったらやばい。いっきに体の力が抜け、魂が彷徨ってしまいそうだ。仕事に緊張感を持ち、モチベーションを高めなければならない日は聞けない。だから最近ようやく聞いている。
彼女の歌声の中には、古き良き時代のアメリカのおおらかさがある。愛と自由を純粋に追い求めた頃のにおいがある。とてもいい。彼女の歌は、スローバラードが多いが、とても聞きやすい。学生の頃、ちょっと英語力に自信が無くなるとジュディーの歌を聴き、「なんだおれ、英語の歌がけっこう聞き取れるんじゃん」と、自己満足に浸った(・・・笑い)。
ジャズ喫茶のオヤジに憧れた私としては、もしお店を出すなら『ガーランド』という名前以外に考えられない。そしてちょっとふさぎ込んだ客が入ってきたなら、ジュディの歌うSMILEでもかけてやり、ジャズセラピーでもやってみたいものだ。
ジュディの歌う曲では、『OVER THE RAINBOW』が圧巻だ。多くのジャズシンガーがこの曲をカバーしているが、アナログ録音で聞く彼女の歌声は、とてもドラマチックで繊細な力強さとでも言ったら良いだろうか、不思議な力がある。
そしてもう一曲忘れていけないのは、『FLY ME TO THE MOON』だ。この曲もやばい。ささやくように歌い始める彼女の甘い声に、思わずとけ込んでしまう。間奏の前にささやく I LOVE YOU の彼女の歌声に、今でもドキッとしてしまう中年おじさんなのである。
実は私が始めてジュディー・ガーランドのレコードを手にしたのは、曲など分からないまま、ジャケットのジュディーがあまりにも美しかったので買ってしまったのだ。それだけである。正直申し上げて、当時おこちゃまだったので、彼女の大人の魅力が今ひとつ理解不足の感があった。年輪を重ねてきた今、ようやく彼女の人生が歌の中に見えてきたような気がする。
これを読んでくれている塾生達よ、君たちが聞いても残念ながら良さはまだまだ理解できないはずだ。ゆめゆめ買ったりしてはいけない。聞きたいものは、自習室に置いてあるので貸してあげよう。
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金田先生がジュディ・ガーランドのファンだとは知りませんでした。実は私もジュディがあまりに美しいので、とりこになってしまった口です。彼女のOver the rainbowはいいですね。映画「スター誕生」のワンシーンの彼女が娘のライザ・ミネリによく似ていて、当たり前のはずなのですが、あらためて驚いている私です。
かねごんです。
小林先生コメントありがとうございます。やっぱり美しいものはいいですね(・・笑い)。
投稿: 学び舎主人 | 2008年3月16日 (日) 23時30分