God Bless You
アメリカの憲法の中に「God has created all men equal.」神様は全ての人間を平等に創造した、というフレーズがある。
キリスト教主義の国家であるアメリカが、常に聖書の中の神を政治に持ち出し、美辞麗句を打ち出す政治手法は、個人的には好きではない。
1960年代、私にとってアメリカはまさに憧れのドリーム国家だった。テレビから流れるアメリカの映像は、豊かさの象徴だった。
しかし、そんな繁栄の中でケネディが暗殺され、ベトナム戦争が泥沼化していく中、私のアメリカは変わっていった。人種差別、ヒッピー文化、ドラッグの蔓延、平和と平等を旗印に世界のトップを走り続けるアメリカは、大切な何かを失い迷走していった。
私が子供の頃に憧れたアメリカ。あの憧憬の本質を自分で確かめたく、私はアメリカ文学を大学で学んだ。キリスト教学や聖書学を学んで行く中で、世界のありようが、人間の欲望の放出で構築されてきた事実を知った。
「神の存在価値」や「人類のたどる行く末」などのキーワードを本の帯に見いだし、本を読みあさっていく中、何度も過ちを繰り返す人類を、もう神は見捨ててしまったのではないかと、青二才の若造である私は思ったものだ。
黒人のジャズに傾倒し、クリスチャンでもない私が半分英会話目的であったにせよ、アメリカ人が多く来る日曜の教会に通い、いわばアメリカに媚びていったのは、アメリカナイズされていく自分の失態を、自虐的に楽しんでいるもう一人の自分がいたからのような気がする。
塾の仕事をしていると、教え子からアメリカに留学したいという相談をたまに受ける。「ぜひ行って見て、アメリカを確かめて欲しい」と私はいつも言う。ひょっとしたら思いの外感動するかも知れない。幻滅するかも知れない。
「外国に行って日本の良さを知る」などという陳腐な言葉を述べるまでもないが、東京の街の風景も、ニューヨークの街の風景も、そして香港の風景も、それほどの違いがあるようには思えない。世界の風景が均一化してきている。
19年前塾を開校したときに、友人のキリスト教伝道師のアメリカ人から、記念にと何枚かのアメリカの記念硬貨をもらった。God bless you と刻印されたアメリカの硬貨に何か不釣り合いな違和感を覚えた。
私の愛する宮沢賢治が、もし現在のアメリカ社会、そしてアメリカナイズされた日本社会を見たならば、神に祝福された世の中だと思うだろうか。生きていくことの本質的欲望と快楽的欲望を混同し、品格を失った人々を見て彼は何を思うだろう。
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