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2007年11月28日 (水)

幸福の王子

 オスカーワイルドの「幸福の王子」を数年ぶりに読みました。風と虹の教室に来ているこども達のために、幼児向きの絵本や童話を自習室に置いていますが、結構中学生や高校生が懐かしがって読んでいます。そして私もたまに絵本を手に取ってみるのですが、むかしから読まれ続けられてきた童話には、素晴らしい作家の洞察と哲学が盛り込まれており、読むたびに新たな感動を覚えるものです。

 産業革命の嵐が吹きまくっていた頃のイギリスにおいて、貧富の差は激しいものがありました。戦後の日本のように、みんなが貧しいときは、苦しみや悲しみも痛み分け出来るのですが、一方が富んでくるとそうはいかないのが人間です。

 幸福の王子の作家ワイルドは、1800年代中頃イギリスのダブリンで生まれました。父親は開業医で、上流階級のこどもとしてなに不自由なく育てられました。そんな彼が耽美主義の劇作家とし名を馳せていくのですが、後に彼が同性愛者であることが知られ失墜します。その頃に書かれたのがこの幸福の王子です。

 小さい頃初めてこの本を読んだときは、ツバメのけなげな働きに感動し、寒さで死んでいくツバメがかわいそうで仕方がありませんでした。こどもの頃、夏の終わりに空を飛んでいるツバメを見ると、はやく南の国に帰ってねと願ったものです。

 こどもの頃の感性の多感な時は、本の影響はすさまじいものがあります。かくいう私も、幸福の王子の作品の呪縛にあってしまい、贅沢品は敵だという習癖がトラウマのごとく身につき、未だに新車の車は買えないですし、家の周りに豪華な土塀などを見てしまうと、このお金でどれだけの人が世界中で救われるだろうなんて考えてしまいます。ほとんど病気ですね(笑い・・・・・・)。

 立派な家や自動車は、やがて朽ち果てます。お金だって、戦争や国家体制が変わってしまえば当てになりません。知性や教養や、芸術的感性はお金のように離れていくことはなく、生涯にわたり個人を支え、生かされていきます。学びとはとても神聖な人間の営みなんだと思います。

 今いろいろと、進路のことで悩んでいる受験生も多いことでしょう。働くことももちろん大切です。でも勉強するチャンスがあるなら先の学校に進むこともまた必ず人生にプラスになります。努力して下さい。きっと幸福の王子に頼まれたツバメが、そっと勇気いう宝石を運んできますよ。

 

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