一関一高附属中学校併設への私見
去年、一関一高に附属中学校を併設するという記事が新聞に載って以来、仕事柄さまざまな所で保護者の皆さんに意見を求められてきました。今回は、この件についてあらためて私なりの私見を述べさせていただきます。
現在一関市において、私学を含め9校の高校があります。それぞれの学校が地域の特色を生かし、また生徒のいろんな能力を尊重しながら学校運営にがんばっておられます。
また中学生の皆さんも様々な希望を持ち、学校を選択しています。甲子園を目指したいので学院で、と言う方もいるでしょう。また良い大学に入りたいので一高へ、という生徒もいるはずです。福祉を学びたいので二高の総合科を選ぶという女子生徒も多いでしょう。
いろんなニーズによって高校が選択されています。そういうふうに希望を持って高校に入ったにもかかわらず、高校との折り合いが合わなかったり、自分の将来の進路が変わったりして中退していく生徒が多いのも現実です。
25年も前の話で恐縮ですが、私は東京の四谷大塚系列の私塾で、私立中学校の受験指導を2年間ほどやっていたことがあります。 開成、武蔵、等の有名中学校を目指す小学生のレベルの高さに、本当にビックリしたのを憶えています。
小さなこども達が毎日夜10時過ぎまで、塾で勉強する姿は決して望ましい姿ではありません。 しかし、時代が求めていたニーズでもありました。時はバブル前夜、良い学校さえ出れば、将来は約束されたような錯覚を、親達や社会は抱いていたように思います。
時は今、昔のような学歴神話こそ影を潜めた気がしますが、まだまだ高学歴社会への傾倒はぬぐい去れないものがあります。
話はちょっと変わります。現在公立学校の先生方の休職が増えています。精神的ダメージによるものです。 全国で3万人とも4万人とも言われているようですが、過去10年間で2倍の数になっているそうです。 なぜでしょう。それほど学校の環境が悪化したのでしょうか。 私はちょっと違う視点でとらえています。 バブル崩壊後、公務員や教員志望の学生が急に増加しました。 特に教員試験などはすさまじい倍率で、一次試験などはほぼ満点じゃないと通らない、そんなうわさも飛び交っています。間違いなく頭脳優秀な方々が学校の先生なられています。 しかしその努力してきた過程の中で、めんどうが起きそうな人間関係をあえてさけてきた傾向は無かったでしょうか。問題行動の多い、粗野な生徒の心情をくみ取ってあげるという点で、なにか我々教える立場の者に不足してきたものがなかったでしょうか。
小学校卒業後、選ばれた生徒として附属の一関中学校に集い、勉強することは、学びやすさにおいて確かに多くのメリットはあります。 教える側にしても扱いやすい生徒さん達でしょう。 しかし今、格差社会が進んでいる現代社会が故に、弱者や恵まれない環境に苦しむ人達の痛みを、わかってあげられる指導者が求められています。そして、そのような人材を育成していくことが、教育のつとめであると考えます。勉強が得意な人もそうでない人も、真面目な人もおてんばな人も、一緒にワイワイがやがや過ごす時間の中で、構築され熟成されていく教育もあるはずです。
従来通り、中学三年生になってからの進路選択が、この地方の風土に合った教育システムだと、私は考えます。
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